ネット上の可処分時間の伸びはここ数年でほとんど一定になりました。一日にスマホを触る時間ってここ数年でそんなに増えていないな、と肌感覚もあるかと思います。
一方で、コンテンツの増加は凄まじい。
人気のプラットフォームでは毎日コンテンツが投入され続けます。Spotify で人気のアーティストの曲やポッドキャストを聴いて、YouTube をダラダラ見て、SNS で気になる記事をチェックして、Netflix で数本ドラマや映画を見るだけで一日が終わります。
そんな中でもクリエイティブな作品を生み出すことで生計を立てるのには、とても憧れがあるものです。
例えば絵画などのアートはいわゆる、コンテキストの世界です。「画の上手さ」なんてほとんど関係ないと思います。長く続く時代のコンテキストに、ちょっと新しい付加価値や切り口で新たな提案をしていく、、そんな世界です。
多くの人にとって、画を鑑賞して色々感じ取るのはそこまで難しいことではないと思います。しかし、その背景に広がる膨大な歴史的なコンテキストに対する “提案” まで鑑賞できる人は少ないです。
膨大なアートの歴史をインプットして、コンテキストを理解して、芸術を鑑賞して適正な値段でそのアートを購入する、、、なんてことは多くの人にはできないですよね。だからアートの世界は評論家がとても大事なポジションを担っています。心を動かしてくれたり楽しませてくれるアートはたくさんありますが、それにお金を払えるでしょうか?何円か値付けできるでしょうか?
音楽やマンガ、小説、写真、映像、絵画に彫刻に、、山程のアートがあります。それを見れば誰でも何か感じるものです。
しかし、まだ人気が出ていない作品を見て、それがすごく良かったとしても、それにお金を払うのは難しいです。
お金を払ってもいいのかどうか、多くの人には判断できないのです。
アートは、各業界のインフルエンサーが価値を付けます。インフルエンサーといっても、絵画などのアート市場では評論家だし、音楽の世界だと敏腕プロデューサーや実績のあるアーティスト、Spotify プレイリスター、、、各業界に影響力を持っているインフルエンサーは様々です。
多くのクリエイターは、その業界のインフルエンサーに作品を送ります。自分の作品がその人たちを通してプッシュされないことには、クリエイティブで生計を立てることなんてできないと知っているからです。
作品を作ることが誰でもできるようになりつつあります。膨大なコンテンツが毎日インターネットという宇宙に放り込まれ続けます。
人々の、とくにネット上の可処分時間は有限なので、コンテンツ過多の流れは止まりません。自分の作品を売るどころか、人に見てもらうだけでも果てしない努力をする必要があります。
そのためには、業界のインフルエンサーに自分とその作品を売り込むことが近道です。そのインフルエンサーからプッシュを受けて初めて作品に値がつきます。拡散力もあるので、多くの人に注目されます。
音楽の世界ではそれが顕著です。インフルエンサーに自分の作品を売り込むことを「Pitch」と言います。音楽の Pitch サービス SubmitHub がその分野で小さな成功を収めています。
SubmitHub は、自分の音楽を Spotify プレイリスターや音楽ブロガー、YouTuber や ゲームストリーマーに Pitch できるサービスです。
$1 で 1 通インフルエンサーに Pitch を送ることができ、インフルエンサーは送られてきた音楽を 20 秒以上聴いた上でシェアするかどうかを決めます。シェアしないのであれば、その理由を 10 語以上でアーティストにフィードバックするという仕組みです。
Pitch 時のお金は、インフルエンサーと SubmitHub で折半となります。
てことで、私も有名な Spotify プレイリストを持っているインフルエンサーに健気にも音楽を Pitch してみました。相手は、Spotify のプレイリストのフォロワーが 14,000 人を超える人気プレイリスターさんです。
正直言うと、君の音楽はいわゆる “アマチュア“ だね。
1 分半ほど私が作曲した音楽を聴いてくれた後で、厳しいフィードバックを送っていただきました。くぅ。。
SubmitHub はインフルエンサーの紹介ページがあるので、それをざっと取ってくると、
音楽の領域だけで、約 8 億円分のお金が Pitch に使われているのは驚きです。
インフルエンサーには毎日大量の DM が届きます。そこを管理・換金するニーズをうまく捉えた上で、サービスとして立派に成り立たせています。
多くのクリエイターは、作品を創ることだけでなく作品を売り込むことにも時間を使わなければなりません。
SNS 上で他のクリエイターと繋がったり、ファンとのコミュニケーションに膨大な時間を割いたり、本当に苦労しています。
“ 良いものを作れば評価される “ というのは甘いという風潮がありますが、私はインターネットの力でそんな世界が実現できたらな〜と思っているので、引き続きサービス開発を頑張ります。